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そもそも今のオレがあるのは、この「値下げマン」があったからであろう。
商家で生まれ育ったオレは、いつの日か自分も商売をやって生きてゆくのであろうと思いはじめた。育った環境から「モノを仕入れて、売って金を得る」ということに抵抗を感じてなかった。
そんなことから、就職活動もなんとなく流通業界をメインにいろんな企業を回った。
大学を出て、オレは神奈川県相模原市にある「アイワールド」というディスカウントストアに就職した。いわゆる激安業界だ。ここではアパレル(衣料品)部門を担当した。俗に、「糸(衣料)を制すもの、小売りを制す」と言われていて小売り業の中ではアパレルが一番難しいと言われている。カラ−・サイズ・流行・素材・縫製・製造国・地域性・価格などといった項目で消費者やマーケットの果てしない要望を満たさないといけないからであろうか。ただ、当ると儲けはでかいジャンルでもある。
オレは主に紳士重衣料(簡単に言うとスーツからネクタイ、ワイシャツなどのビジネス衣料)を担当していた。バイヤーの言う事を全然聞かないヤツで、だいぶやんちゃにやってきた。結果はバイヤーがやることより出してしまったかもしれないが、そのバイヤーにはいろんな意味で感謝している。その人がいなければ、楯突くオレが芽吹かなかったから。
激安業界は、フィジカルな面でとても辛い業界だった。拘束時間も長く、重たいものを持ったり、休みも出勤してしまう状況で、血のおしっこもしょっちゅうだった。だが、やったもの勝ち的なファジーな業界であるため、オレはいつの日かそんな激しい業界が好きになっていた。
そんな消費者と常に対面している日常の中で、価格訴求するだけの店は面白くないと思った。さらに言うなら買い物以外の付加価値を提案したいと思った。
元来、サービス精神旺盛なA型のオレは、商売抜きにしたタイムサービスに力を注いだ。よくスーパーマーケットなどで名ばかりのタイムサービスをやっている店が多いが、ちっともうま味がない。「この時間限りのご奉仕!」とか言って、何も奉仕していない。あれは消費者をバカにしている。オレは本気の売り切れご免のいい意味で殺気立つタイムサービスを頻繁に討っていった。
消費者は、その品を安くゲットできるお得感はもちろん、そのタイムサービスに参加していること自体に楽しいと思ってくれれば、尚良しと考えた。結果として、商売にならなかったとしても、店の人気付けになるし印象広告だと思った。その人にはその店の印象が強烈に残る。小さい子連れのお母さんなら、子供が「あそこの店はおもしろいから、Y堂よりそっちに行こうよ!」なんて言ってもらえたら、差別化として最高だ。
ねらいは的中した。真剣勝負のタイムサービスを重ねるたびに、短期間のうちに店の売上げは前年比を大きく上回っていった。目的買いと衝動買いのコンビネーションの演出が奏功した。
ただ、人には飽きがあり欲がある。消費者もオレもさらにその上を望んでいた...。
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